ビジネスレター講座
はじめに
ラブレターとビジネスレターはどちらも自分の思いを相手に伝える点では同じですし例文が世の中に豊富なのも同じです。伝える内容と相手がちがうだけでこうも受ける印象の異なるものになります。長年にわたって多くの人が事あるごとにしたためてきたので世の中に溢れているわけです。近くの本屋に行けば手引書を買い求めることができます。手引書の例文のなかから適当なものをピックアップして語句を修正すればそこそこの文章は書くことができます。近年のコンピュータと通信の進歩には目を見張るものであります。かなりのビジネスレターが電子メールとしてやり取りされていると思われます。ホームページでの自社や製品の紹介も立派なビジネスメールの一つの形態です。このように企業活動が激変する中ではビジネスメールも激しい変化の中に身を置かざるをえません。
正確なビジネスレターは誰でも書けます。そのためには文形の基本をマスターする必要があります。ビジネスレターの文章で目立つことはありません。必要な事項をたんたんと書けばよいのです。それでも書き手は生身の人間です。知らず知らずに自分の感情が文章にもぐりこんでしまったり、文脈がつながらなくなったりする事があります。あらかじめ用途に応じた標準文型を用意しておくことが大切です。ビジネスレターには書かなければいけないことがあります。必要事項を書き落としてしまえばビジネスレターとしての価値がなくなりますし、間違えた内容を書いてしまえば会社に損害を与えることになります。厳しい減点主義の世界です。
ビジネスレターをすいすいと書きたければビジネスレターの参考書を手に入れてください。しかし、ワープロソフトも検討する価値はあります。ワープロソフトにはビジネスレターの例文がついてきます。たとえばマイクロソフト社の製品、Officeのc:\Program Files\Microsoft Office\Templates\1041というフォルダには200以上の例文が収められています。すでにコンピュータに記録されているのですからキーボードからあらためて入力しなおす必要はありません。最新のワープロソフトには文章のチェックや語句の説明などなかなか便利な機能がついてきます。ワープロソフトで入力したかな文字を漢字に変換する際に「韓国」ではなく「勧告」に変換されたのに気づかない変換ミスがときどき起こります。読み手も慣れていて頭の中で無意識に再変換してくれますので実害はないといえますが、決して誉められたことではありません。また、漢字を使いすぎがちになるのもワープロソフト使用の弊害の一つです。私を含めて漢字を自分で正確に書けなくなった人が増えているのも気になることです。このようにワープロソフトには光の部分だけでなく影の部分もありますが、それでも私がここで皆さんにお勧めしたいのは「日本企業とビジネスするなら日本語版ワープロソフトを使おう」です。
ビジネスレターには一定の形式があります。どのようなブロックをどのような順番で並べるかが決まっています。それぞれのブロックの書き方も決まっています。つまり前付け、件名、頭語+挨拶、主文、結語の順に五つの機能ブロックを配置します。そして用件の部分だけは用途別になります。各ブロックの書き出しを見れば、どのブロックであるかもわかりますし、慣れてくれば挨拶の部分などはブロック全体に書かれていることをそらんじることすらできるでしょう。ビジネスレターはこれほど形式が決まっているマンネリの世界です。マンネリの世界では相手に安心感を与えることができますし、適当な手引書さえあればあなたでも一定レベルのビジネスレターが書けるようになります。ビジネスレターを恐れることはありません。相手を知ればよいだけです。
この講座ではビジネスレターのブロック構成、各ブロックの書き方の概略を最初に学習します。次に機能別と用途別の例文を業務の流れに沿う形で提供します。皆さんがビジネスレターを書くのが好きになること、これが私の希望です。
それではビジネスレターはどのように組み立てられているのでしょうか?
上図のようにビジネスレターは前付け、件名、頭語+挨拶、主文、結語の順に六つの機能ブロックで構成されます。各機能ブロックの典型的な書き出しは下表のとおりです。
ビジネスレターは封筒に収めた書状が一般的な形式で、本体の書面は横書きが一般的です。特に形式を重んじる挨拶状や、礼状、見舞い状、お悔やみ文等では縦書きを使用することが多く、このような場合は件名を省略します。筆書きを模した字体・フォントを使うことも多いようです。はがきなどでの挨拶状は今でも縦書きが一般的ですが、筆による縦書きからワープロによる横書きが歴史の流れです。
日本語には尊敬語、謙譲語や丁寧語等の敬語があることはご存知だと思います。韓国語と同じです。外国人が日本語や韓国語を学習するときに苦労する点です。しかし日本人でもなれないうちは苦労します。若い人が苦労するのは最近だけのことではありません。30年以上も前に官庁に入ることが決まった大学時代の先輩が急に敬語の練習をし始め、敬語の練習台にされた周囲の人々が大いに戸惑っていたことを思い出しました。それほどに敬語は習熟が難しいものです。
しかし、ビジネスレターで難しいのは相手に対してどこまで丁寧な言葉遣いをするかでしょう。いくらビジネスは対等だからといっても、ビジネスレターで対等な物言いはしません。たとえ訴訟などの争いごとになっても相手を罵倒することはありません。常に自分をワンランク低い立場に置くと考えてください。しかし、丁寧すぎると相手に卑屈な印象を与えかねません。堂々としているが丁寧な文章、これが理想です。
ビジネスレターでは簡潔な文章を心がけてください。長すぎる文章は誤解のもとです。書いた文章を自分で読み返して読みやすい文章を心がけてください。慣れないうちは声に出すのも一つの方法です。息が続かなくなったら文章が長すぎです。意味が通らないときには語句を替えたり順序を入れ替えたりしますが、句点「。」で文章を二つに分割するとすっきりする場合が多いようです。どこに置いて良いかわからない語句は省略してみましょう。重要な語句であればおのずから納まる場所は決まっているはずです。
「お願い申しあげる次第でございます」、「お願い申し上げます」、「お願いいたします」はどれも丁寧な文章です。文例では「お願い申し上げます」に準じた中間程度の丁寧さになるよう心がけましたが、依頼文などでは「お願い申しあげる次第でございます」を使用しています。自分の会社を「当社」、「弊社」、「小社」等と呼びますが特にへりくだることなく「当社」を使用してよいと思います。
年号は西暦を使用します。外国からのビジネスレターで和暦の「平成」を特に使用する必要はありません。奇異に感じる相手もいるでしょう。元号から西暦が時代の流れです。ちなみに私は西暦と和暦の置き換えに1945年が昭和20年になることを基準に使っていました。今年、2000年は平成12年になります。
この口座で使用する例文はできるだけ具体的な内容を心がけました。皆さんの実際例に応じて語句を入れ替えてください。入れ替え落ちがないように入れ替えが必要な語句はかぎ括弧でくくったり、何文字かのxで表現しました。ということで書きあがったビジネスレターはかぎ括弧とxに特に注意してチェックしてください。
それではビジネスレターの最初の例文を紹介しましょう。ヒットしている製品シリーズに新機種を加えたことをお客様へ紹介しています。
例文−1 新製品の売込
NO.xx-xxx-xxx
xxxx年xx月xx日
xxx株式会社
xx部 xx xx 様
xxx株式会社
xx部 xx xx ㊞
xxxシリーズ新機種のご紹介について
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、この度ご紹介させていただきますxxxシリーズは、汎用性の高いxxx機器として繊維業界を中心に数多くの納入実績を持つ当社屈指のヒット商品でございます。最近では新製品の市場投入サイクル短縮化を可能にする機器としてご採用いただく事例が多くなってまいりました。このようなお客様のニーズに幅広くお答えするため、低価格機種と高機能機種をシリーズに加えましたのでご紹介させていただきます。
導入提案書を同封いたしましたので、ご多忙のところ恐縮ですがご一読いただき、お問い合わせなど頂けましたら幸に存じます。
敬具
いかがですか?とても簡単でしょう?どの部分がどの機能ブロックになるのかわかりましたか?前付けが「NO.」で始まる6行、件名が「xxxシリーズ新機種のご紹介について」の1行、頭語+挨拶が「拝啓 貴社ますます」で始まる1行、主文が「さて、この度」で始まる5行、末文が「導入提案書を」で始まる2行、結語が「敬具」の1行です。
各行が置かれている横方向の位置は大切ですので注意してください。左寄せ、一文字の空白つきの左寄せ、中央揃え、複数行が同位置から始まる右寄せ、右寄せです。
それではビジネスレターの各ブロックについて簡単に説明しましょう。
あて先は役職名に氏名を続けて「様」を付けます。宛先の担当者の氏名は大切です。相手からのビジネスレター、名刺、会社名鑑などから情報収集します。氏名がわからないときは役職名に「殿」を付けます。
漢字の多さに悲鳴をあげている日本人から見ると、外国で漢字を使っていないのが羨ましくもなりますが、不便なこともあるのではないかと他人事ながら心配になることがあります。中国の康煕字典を例に引くまでもありませんが、漢字の多いこと、まさに夜空の星のごとしです。現在の日本では簡単な字体の漢字を使用しています。使える漢字も小中学校で教える教育漢字、一般的に使用されている当用漢字が普通です。さらに名前に使用できる漢字が追加されています。子供が生まれると出生届に名前を書いて届けますが、教育漢字、当用漢字、名前用に認められた漢字を組み合わせになります。
若い人の名前には古い字体や特殊な漢字はありませんが、先祖から受け継いだ姓は別です。一時は古い字体を見ることが少なかったように思いますが、最近は戸籍にある正式な字体を使う人が増えたようです。おなじ小沢さんでも小澤という古い字体を使用している場合がありますので注意してください。「沢」と「澤」はワープロソフトでは別の漢字コードをもつ二種類の漢字です。「わたなべ」さんは「渡辺」、「渡部」、「渡邊」、「渡邉」となります。ワープソフトで変換できない漢字、つまり漢字コード表にない漢字はその文字だけを手書きにしても失礼になりません。正式の漢字がないことを相手の方はとうにご存知です。
頭語と結語は一定の対応関係があります。ほとんどの場合は「拝啓」―>「敬具」です。通常の返信につかう「拝復」―>「敬具」、親しい相手に対していきなり用件に入るときの「前略」―>「早々」程度を知っていれば十分です。
挨拶はいろいろあるように見えますが、表現方法が違うだけで内容のバラエティーの少ないものです。相手の商売繁盛を喜び、場合によっては自社に対する愛顧を感謝する言葉を続けます。時候の挨拶から始めることもありますが日本と外国では気候が違いますので、相手に違和感を与えないように省略してしまうのも一つの方法です。例文では「拝啓 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。」を使いました。自由にほかの挨拶で置き換えてください。一部の例文では「拝啓」が「拝復」になったり、「前略」で省略されたりしています。自由に置き換えてくださいと言いましたが定石がありますので簡単に説明しておきます。
まず、相手の商売繁盛を喜ぶ部分を式の形で表すと、
貴社/御社+[には/におかれましては]+ますます/いよいよ+ご清栄/ご隆盛+
のことと+お喜び申し上げます/拝察いたします
となります。/の前後の語句の一つを選びながら連結していきます。[と]で囲った語句は省略可能です。ご自分でいろいろと試してみてください。私が例文で使った「拝啓 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。」は簡単に復元できたと思います。時間がある方は何種類が合成できるか考えてみてください。次に、自社に対する愛顧を感謝する部分は同様に、
平素は/日頃は+並々ならぬ/格別の/ひとかたならぬ+お引き立て/ご愛顧/ご厚情+を賜わり、/にあずかり、+[誠に]ありがとうございます/[厚く]お礼申し上げます
です。「平素は並々ならぬお引き立てを賜わり、誠にありがとうございます」が読み取れましたか?この二つの式は途中で枝分かれさせたり、選択できる語句を増やしたりするとかなり複雑になります。興味のある方は挑戦してみてください。
挨拶から主文に移るために起語を使います。「さて」や「このたび」が一般的ですが、「承りますれば」、「早速ですが」、「突然ですが」、「唐突で恐縮ですが」等を内容に応じて使い分けます。使い分けは例文を参考にしてください。
主文はビジネスレターが伝えるべき本題、テーマ、用件そのものです。目的に応じた主文の書き方を学習するのがこの講座の主要な目的です。
末文は主文に続く結びの挨拶で主文の念を押す形になることが多いようです。依頼文の場合には回答を求める形になります。文頭での挨拶を省略したときには、相手の健康を祈る挨拶、今後の愛顧をお願いする挨拶などを末文として置くこともあります。
主文の念を押す形
・まずは+[書面にて/書中にて/書中をもって]+お知らせ/ご通知/ご連絡/ご報告/ご照会/ご依頼/お願い/ご返事/ご回答/ご挨拶/お礼/お詫び+申し上げます
・まずは/とりあえず/とり急ぎ/まずはとり急ぎ+お知らせ/ご通知/ご連絡/ご報告/ご照会/ご依頼/お願い/ご返事/ご回答/ご挨拶/お礼+まで/[まで]申し上げます
・まずは/とりあえず/とり急ぎ/まずはとり急ぎ+用件のみにて失礼いたします
・まずは/とりあえず/とり急ぎ/まずはとり急ぎ+お礼かたがたご挨拶/ご返事かたがたお願い/お詫びかたがたお願い/お詫びかたがたご連絡+まで/[まで]申し上げます
回答を求める形
・それでは、ご多忙のところ恐縮ですがご返事を+お待ち申し上げます
・では、ご返事をお待ち申し上げます
・右、/以上、+[折り返し]+ご回答くださいますようお願い申し上げます
・誠に勝手なお願いで恐縮ですがxx月xx日までにお返事を+くださいますよう/いただけますよう/いただきますよう/いただきたく+お願い申し上げます
了承を求める形
・何とぞ+このような/かような+事情をご賢察のうえ、+今回の値上げ/貴意に添えませんこと+をご了承くださいますよう、[伏して]+お願い申し上げます
相手の健康を祈る挨拶
・それではなお一層のご健勝をお祈り申し上げます
・酷暑/酷寒+の折から、皆様のご自愛をお祈り申し上げます
今後の愛顧をお願いする挨拶
・では、こんごとも+[何とぞ]+よろしくお願い申し上げます
・それでは、+今後も/今後とも引き続き+[倍旧の]+ご愛顧/ご用命/ご厚情+を+ください/賜わり+ますよう+[謹んで]+お願い申し上げます
・それでは、今後ともよろしく+ご指導/ご鞭撻/ご支援+くださいますようお願い申し上げます
末文は冒頭の挨拶や主文との関係を考慮する必要があるため変幻自在です。上にあげた式ではとても表現しきれません。慣れないうちは文例に準じて冒険しないことです。面白いことに回答を求める形で挙げた「右、」は横書きの場合でも「以上」の意味で使われます。縦書き文章での右に書いてあるという意味が、「これまでに書き記した」という意味に転化したためかと思います。
以上でビジネスレターの形式の概略を解説しましたので、これからはストーリー性を多少持たせた展開でビジネスレターの例文を解説していきます。ストーリーは会社設立、売込み、見積り、納品、代金の決済、値引き交渉、クレームなどと展開する予定です。一つでも多くの例文を実際に使っていただけたらと思います。
例文−2 新会社発足の挨拶
NO.xx-xxx-xxx
xxxx年xx月xx日
xxxx株式会社
xx部長 xxxx様
xxxx株式会社
代表取締役 xxxx ㊞
新会社発足のご挨拶
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、このほど当社ではxxxシリーズ販売体制強化のため下記のとおり新会社xxxx株式会社を設立し、xx月xx日より業務を開始する運びとなりました。取り扱い商品をxxxシリーズに限らせて頂くことで、これまで以上に質の高いサポートを実現するだけでなく、xxxシリーズのもつ汎用性を生かした活用方法を提案させていただく予定でございます。発足間もない会社でございますが、皆様のご期待に添えますよう従業員一同、全力を尽くしてまいる所存でございます。
皆様におかれましては当社に対すると同様のご愛顧を新会社に対しても賜わりますようお願い申しあげてご挨拶とさせていただきます。
敬具
記
1. 会 社 名 xxxxx株式会社
2. 代表取締役 xx xxx
3. 所 在 地 xx市xx区xxx−xx−xx xxビルx階
4. 電話番号 xx−xxxx−xxxx
5. 設立年月日 xxxx年xx月xx日
以上
解説
まずは販売会社が特定の製品シリーズを取り扱う販売会社を別会社として設立したと想定した挨拶状です。箇条書きした会社名、代表取締役、所在地、電話番号、設立年月日を別記として結語に続けています。この箇条書き形式は主文で「下記のとおり」と簡潔に述べるだけで済みますし、必要な情報を整理して相手に伝えるのに適した方法です。
例文−3 販売代理店への新規取引の依頼
新規お取引について
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、突然の手紙にご不審のことと拝察いたします。本状は新規お取引のお願いです。
当社はxxxx年の創業以来、韓国xx市において「xxxx」の製造販売を営なみ、早くより日本市場に注目して、xx株式会社様に「xxxx」の九州地区販売代理店をお願いしてまいりました。九州地区での売上は順調に推移し、昨年度は10億円の規模に達しております。より多くの日本の皆様へ「xxxx」をお届けしたいとの思いから、当社では御地xx地区に有力な販売代理店を求めておりました。このたび同社社長のxx様から貴社のご盛業ぶりを承り、是非とも当社とお取引いただきたくお願い申しあげる次第です。
現在、韓国内にも数社の同業者がございますが、当社はお陰様でお得意様から特に高い評価をいただいております。当社といたしましても貴社の売上増に微力ながら貢献させていただけるものと確信いたしております。
つきましては、別便で当社の営業案内・資料等をお送りいたしましたので、ご多忙のところ恐縮ですがご高覧のうえご高配賜わりたく、まずは書面にてお願い申し上げます。
敬具
解説
国内市場での優位性、日本市場への戦略的取り組みなどをアピールするだけでなく、相手の自尊心をくすぐっています。
この例文より前付け部を省略いたします。
例文−4 人物紹介の依頼
ご紹介のお願い
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、当社の主力製品「xxxx」は、発売開始以来、皆様からご好評をいただき、売上も順調に推移してまいりました。しかし、xx地方だけは当社と競合関係にあるxxxxが圧倒的に強く、あらゆる対策を講じてまいりましたが思うに任せません。xxxx株式会社社長のxx xx氏がxx地方でお父様の時代から販売関係に携わってこられ、xx地方での販売業のあり方に関してのご高説をお持ちのことと聞き及びました。
ところで、xx様にはxx氏とは、中学校以来のご親交の由と承っております。
つきましては、突然の甚だ勝手なお願いで恐縮ではございますが、お差しつかえない範囲で、ご紹介なりご斡旋なりを賜わりたく、お願い申しあげる次第でございます。
近日中に改めて参上し、ご都合等をお伺いいたします。
とりあえず、書中をもちましてお願い申し上げます。
敬具
解説
無理なお願いをしているため、「お願い申しあげる次第でございます」、「書中をもちまして」と特別に丁寧な文章になっています。
例文−5 新規取引の依頼
お取引の申し込みについて
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、当社はxx市xx町で「xxxx」関連商品を販売しておりますが、最近の食文化の多様化から貴社製品「***」についての問い合わせが多くなりました。かようなお客様のニーズに答えるとともに取り扱い商品の充実を計りたく、新規のお取引をお願い申しあげたく存じます。
もしご承諾いただけますならば、どのような条件でお取引いただけるか、ご多忙中誠にお手数ですがご連絡いただければ幸甚でございます。
なお、当社の信用状態はxx銀行xx支店にお問い合わせください。
突然の書状での勝手なお願いで失礼とは存じますが、重ねてお願い申し上げます。
まずは、書中をもってお願い申し上げます。
敬具
解説
簡単に自社を紹介して新規取引の希望を伝えています。相手によい印象を与える簡潔な文章を心がけます。
例文−6 資料請求の感謝
資料ご請求のお礼
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、このたびは当社製品「xxxx」のお問い合わせをいただきありがとうございます。ご請求いただきました製品のカタログ、当社営業案内と製品価格表を同封させていただきました。
なお、添付書類でご不明の点やご質問等がございましたら当社輸出部のx xx(電話
082−x−xxx−xxxx)まで何なりとお問い合わせください。ご検討のうえ、ご用命いただければ、幸いでございます。
まずは、とり急ぎ製品のカタログをご送付いたします。
敬具
解説
製品問い合わせだけでは期待しすぎることはできません。製品カタログを送付して相手の次の動きを待ちます。
例文−7 新規取引開始の依頼
新規お取引開始のお願い
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、この度は貴社製品「xxx」の技術資料とサンプルをご送付いただき、ありがとうございます。
当社にて貴社製品「xxx」の仕様、価格、市場性などを検討いたしました結果、当社の取り扱い品目に加え、主力商品として積極的に販売させていただくことになりました。
つきましては、下記お取引条件での100個まで、500個まで、500個以上のときの各単価にかんしてご照会いたします。ご多忙中恐縮ですが、早々にご回答くださるようお願い申し上げます。
なお、当社の信用状態につきましてはxx銀行xx支店までご照会いただければ幸甚です。
まずはご照会まで。
敬具
記
1. 取引方法 L/C取引
2. 出荷期限 L/C受け取り後4週間
3. 梱包方法 ダンボール箱
4. 貿易条件 本船渡しFOB(釜山)
以上
解説
L/CはLetter of Creditの略称で「信用状」です。また、F.O.BはFree on Boardの略称で「本船渡し」、C.&F.はCost and Freightの略称で「運賃込み」、C.I.F.がCost, Insurance and Freightの略称で「運賃・保険料込み」になります。
海外から日本へのビジネスレターでは輸出入を扱うことが多いと思われます。今回は輸出入を前提にした例文を勉強しました。しかし輸出入業務は貨物輸送、代金決済などの仕組みが複雑で専門知識が必要になります。このような専門知識の解説は成書に譲り、この講座では日本にある外国系企業で必要になるビジネススターということで解説していきます。
例文−8 見積書送付の通知
見積書送付のお知らせ
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、このたび当社製品xxxについて、貴信第xxxx号の見積依頼書を確かに拝受いたしました。
早速、別紙見積書のとおりお見積りさせて頂きましたが、特に価格につきましては貴社のご要望に添えるよう当社にできる限りの配慮をさせて頂きました。貴社にてご検討のうえ何卒ご用命くださいますようお願い申し上げます。当製品はヒット商品でございますが、xx月xx日までにご回答いただければお申し越しの数量、期日での船積みが可能でございます。
なお、ご不明の点につきましては小職宛てに何なりとお問い合わせください。
まずは、書中をもってお願い申し上げます。
敬具
記
同封書類 見積書1通
以上
解説
価格について配慮したことを述べていますが、恩着せがましくならないように注意します。ヒット商品であるとして相手の回答に期限をつけています。
例文−9 見積もり辞退の依頼
お見積もりについて
拝復 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、貴信第xxxx号によるxxxxの見積りの件ですが、貴社ご提示の仕様書による製作に技術的な問題点はございませんが、納入価格を試算しましたところ、ウォンの大幅な上昇により円建て提示価格が貴社のご希望価格よりxx%高くなることが判明いたしました。
ご希望のご予算でお引受けするには仕様変更などをお願いする必要があります。今回は納入までの期間がとりわけ短いお話でございますので、貴社にお手数をおかけするばかりでなくご迷惑をお掛けする結果になりかねませんので、見積り段階でお断りさせていただくとの結論に達しました。
折角のご厚意にお答えできず誠に心苦しい次第ですが、当社の事情をご賢察のうえ、ご期待に添いかねることをお許しくださいますようお願い申し上げます。
とり急ぎお詫びかたがたご回答申し上げます。
敬具
解説
このような辞退のビジネスレターは相手の計画が狂うことになりますので、できるだけ迅速に送付します。
例文−10 製品価格値引きの依頼
製品xxxxの価格値引きのお願い
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
平素から当社に格別のお引立てを賜わり、厚くお礼申し上げます。
さて、当社で販売いたしております貴社製品xxxxでございますが、当社の社運を賭したプロジェクトによる独身女性をターゲットにした拡販策が効を奏しまして、ようやく販売量上向きの兆しが見えてまいりました。
独身女性をつなぎ留めておくためには今後も積極的な拡販策を継続する必要がございます。現状の製品価格では上記プロジェクト終了による拡販策の中止を含めた販売経費削減を精一杯図ったとしましても採算性確保がはなはだ困難な状態でございます。
つきましては、製品価格をxx%引き下げていただくことにより、従来の拡販策を今後も継続しながら販売量増加を図り、その中で採算を確保したく存じますが如何でございましょうか。
勝手なお願いで誠に恐縮でございますがご検討の程お願い申し上げ、ご返事をお待ち申し上げます。
敬具
解説
この製品の販売への自社の特別な取り組みを説明し、相手の受けるメリットに言及しながら値引きをお願いしています。
例文−11 値引きの拒絶
値引きについて
拝復 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて先日、貴社より仕切り価格値引きのお申し込みをいただき、早速社内で検討させていただきました。最近の各種樹脂をはじめとした原材料の高騰等によって当社のコスト削減努力も限界となりました。現状では値引きをお断りさせていただくほかなく、従前の条件でのお取引をお願い申し上げます。
つきましては、今後とも社員一同一丸となって貴社のご満足をいただくべく、努めさせていただく所存でございますので、以上のような事情をご賢察のうえ、貴意に添えませんことをご了承くださいますよう、お願い申し上げます。
敬具
解説
コスト削減にできる限りの努力をしていることをアピールしています。本当は値上げしたいくらいですとは口が曲がっても言い出せない辛い場面です。
例文−12 値引き要請に対する新価格の依頼
お見積価格について
拝復 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、貴信、xx月xx日付の当社製品見積額の値引きご要請の件、早速社内で検討いたしましたがxx%値引きにてお願い頂けないでしょうか。
ご高承のごとく当社製品は他社製品にない便利な機能を持つばかりでなく高品質であると自負し、お客様からもご支持いただいております。また、製造コストの更なる引き下げには原材料の広範な見直しが必要になり、予期せぬ品質低下を招く恐れがございます。
以上の状況を十分ご理解いただき、再度ご検討くださいますよう、重ねてお願い申し上げます。
なお、今回の見積有効期間はxヶ月とさせていただきます。
まずは、ご返事かたがたお願い申し上げます。
敬具
解説
値引き要請に対して反対提案で応じています。応じられない理由を挙げて説得に努めています。ビジネスレターは相手が承諾してくれなければ目的を果たしたとは言えません。
例文−13 製品価格値上げの依頼
製品価格の改定について
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、既に新聞報道等でご承知のことと存じますが、当社製品「xxxxシリーズ」の卸価格をxx月xx日から同封価格表のとおり改訂させていただきたいと存じます。
貴社から長年のお引き立てを賜わりながら、かようなお願いを申しあげることは誠に心苦しい限りですが、昨今の原材料の急騰によりまして、現行価格の維持が不可能な状況でございます。今回お願いする価格は、一層の生産性の向上と合理化の実施を見込んで設定したもので、少しでも貴社のご負担を軽減するように努めました。
何とぞこのような事情をご賢察のうえ、今回の値上げをご了承くださいますよう、お願い申し上げます。
敬具
解説
製品価格の改定は値上げの場合が多いようです。努力しているにもかかわらず値上げせざるを得ない理由を説明して、取引先の納得を得る必要があります。
例文−14 取引条件の照会
お取引条件について
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、このたび貴社製品「xxxxシリーズ」の見積りを頂きありがとうごいます、今後、貴社と継続的にお取引いたしたく存じます。ご多忙中恐縮ですが下記につきご回答いただきますようお願い申し上げます。
なお、当社の信用状態につきましてはxx銀行xx支店にご照会ください。
まずは、ご照会申し上げます。
敬具
記
1.取引価格 各種別につきバラ単価・箱単位単価
2.支払条件 締切日と支払期日及び手形払いサイト
3.保証金 必要な場合の金額
以上
解説
取引を開始したい希望を伝えます。価格の数量割引、支払条件、保証金を問い合わせています。大量取引などでは買い手が価格を指定することがあります。この価格を指値と呼びます
例文−15 取引条件照会に対する回答
お取引条件について
拝復 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、xx月xx日付貴信「第xxxx号」による取引条件ご照会の件につきまして、下記のとおり回答させていただきます。
よろしくご高覧のうえ、多少にかかわらずご用命賜わりますようお願い申し上げます。
敬具
記
1.取引価格 単価xxxx円。数量がまとまればご相談させていただきます
2.支払条件 毎月xx日締め切り、翌月xx日現金決済
xx%はサイトxx日までの手形でも可
3.運賃諸掛 当社負担
4.保証金 xxx万円
以上
解説
社内規定や前例に準じて回答します。何種類も取引条件を使い分けているとミスを誘います。
例文−16 取引条件緩和の依頼
取引条件緩和のお願い
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、先日お送りいただきました取引条件について検討の結果、価格および納期はご希望の条件で結構ですが、代金の支払条件を商品納入月末締め切り、翌月末日xx%現金決済、残りxx%をxx日サイト約束手形払いにさせていただきたく存じます。
誠に勝手なお願いで恐縮ですが、上記の条件につきご検討いただき、xx月xx日までにお返事をいただきますようお願い申し上げます。
敬具
解説
例外が前例になり、前例が原則を突き崩す、だから認められない、といった一直線の思考回路では上手に対応できません。経営者の判断を求めるべきケースかもしれません。
例文−17 発注書
発注書
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、貴社商品を下記のとおり注文いたしますので、大至急のご発送のほど、お願い申し上げます。
敬具
記
1.品名・数量・単価
2.納入期日 xxxx年xx月xx日(x)までに必着
3.納入場所 xx市xx区xxx−xx−xx xxビルx階
4.支払条件 月末締切 翌月xx日貴社銀行当座口振込み
5.運賃諸掛 貴社負担
以上
解説
品名・単価・金額部分の表は表計算プログラムの表を組み込んで、計算違いなどの単純ミスを防いでいます。適切なコンピュータ化は業務の効率化に欠かせません。
例文−18 注文承諾書
注文承諾書
拝復 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、xx月xx日付貴社第**号のご注文書により記商品をご用命いただき厚くお礼申し上げます。
早速、出荷の手配をいたしましたので、ご指定の納期には貴社店に到着の予定です。
なお、今後とも引き続きご用命を賜わりますよう、お願い申し上げます。
敬具
記
以上
解説
例文−1 注文数量訂正の依頼
注文数量訂正のお願い
前略
先に電話でご連絡申しあげましたように、xx月xx日付注文書xxxxで注文しました商品は、誠に勝手ながら下記のとおりご注文数量を訂正させていただきます。
お忙しいところ誠にご迷惑とは存じますが、至急お手配の程よろしくお願い申し上げます。
まずは、とり急ぎ注文の訂正まで。
草々
記
以上
解説
例文−19 注文取消しの依頼
注文取消しのお願い
前略
先日電話でご連絡申しあげましたように、xx月xx日付当社注文書NOxxxxにより注文いたしました「xxxx」xxダースは、納入先より会社整理を理由に注文取消しの連絡が突然入りました。誠に恐れ入りますが出荷をお見合わせくださいますようお願い申し上げます。
現在、別の販売先へはめ込むべく最善を尽くしておりますが、この経済環境下の昨今、思うようにさばけず、このようなご迷惑をお掛けすることになりました。
誠に勝手なお願いで、お詫びの申し上げようもございませんが、なにぶんのご配慮を賜わりますようお願い申し上げます。
まずはとり急ぎ、注文取消しをお願いする次第です。
草々
解説
「お願いする次第です」に無理なお願いをしている書き手の気持ちが現れています。
例文−20 受注辞退の依頼
注文取消しのお願い
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、xx月xx日付注文書NOxxxxでご注文のxxxxは、現在の在庫数では指定期日のxx月xx日までにはご指定の数量を納入するお約束ができない状態です。
誠に申し訳ございませんが何とぞ事情をご賢察の上、ご注文のお取消しをお願い申し上げます。
現在、当社工場では生産ラインの一部増設などの生産体制強化策を進めておりますので、xx月xx日には確実に出荷できる予定です。出荷の見通しが立った時点でご連絡申し上げますので、あらためてご注文賜わりますよう、お詫びかたがたお願い申し上げます。
敬具
解説
例文−21 商品発送の通知
xxxx出荷のご通知
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、xx月xx日付貴注文書xxx号でご注文いただきましたxxx、xxx個でございますが、別紙納品明細書のとおり本日xx運輸の宅配便にて発送いたしました。よろしくご検収くださいますようお願い申し上げます。
なお着荷いたしましたらお手数ですが同封の物品受領書にご署名、ご捺印のうえ、ご返送くだいますようお願い申し上げます。
まずは出荷のご通知まで。
敬具
記
1.納品明細書 x通
2.物品受領書 x通
以上
解説
例文−22 注文品未着の照会
注文品未着について
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、xx月xx日付で注文しました「xxx」xxxセットは、納期をxx日過ぎた今日までお待ちしておりますが、まだ着荷しておりません。
注文書の納期はxx月xx日ということでお願いいたしましたが、どのような事情で遅れているのか案じており、予約頂いたお得意様からも連日矢の催促を受け困り果てております。
これ以上遅延いたしますと当社の今後の営業活動に支障を来たしますので、至急ご調査のうえご回答いただきたく、とり急ぎご照会申し上げます。
敬具
解説
納期の遅れにより自社が蒙っている被害、不都合を書いて相手の迅速な対応を要求します。喧嘩を売るような文章は避けるべきです。相手の対応に納得できなければ、一件落着してから補償を求めたり取引を中止したりすればよいのです。
例文−23 着荷の照会
商品の着荷について
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、xx月xx日付をもって貴店からご注文の「xxxx」は、ご指定どおりxx月xx日に出荷いたしましたが、貴店に着荷しておりますでしょうか、お伺い申し上げます。末だ着荷のご連絡がなく案じておりますので、品物が着荷しておりましたら添付の物品受領書をご返送ください。
万一未着の場合は、早速調査いたしますので、ご多用中誠に恐縮ですが、至急ご一報の程お願い申し上げます。
まずは、とり急ぎご連絡まで。
敬具
解説
輸送途中での事故であり相手は決して悪くないとの前提での文章です。
例文−24 着荷照会にたいする回答
商品着荷のご照会について
拝復 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、xx月xx日付貴信第xxxxx号でのお問い合わせの商品は、確かに指定納品日に着荷しているにもかかわらず、着荷の貴社へのご通知が遅れました。当方の不手際から大変ご迷惑をおかけいたしまして誠に申し訳ございません。
今後はこのようなことのないよう十分注意をいたしますので、どうか従前と変わらぬお引き立ての程をお願いいたします。
まずは、お詫びかたがたご連絡申し上げます。
敬具
解説
商品を買ってやっているのに文句を言うななどとは考えないでください。商品を売らせてもらって利益をあげているのです。
例文−25 商品未着照会の誤りの謝罪
商品未着の件
拝復 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、xx月xx日付の貴信「第xxxx号」を拝受いたしました。
早速原因を調べましたところ、出荷係の手違いから実際の商品発送より先に出荷通知を貴社宛てに発送しておりました。このような単純ミスで平素からお引き立て賜わっている貴社にご迷惑をおかけしてしまい誠に申し訳なく、ただただ恥じ入るばかりでございます。二度とかような単純ミスを繰り返さないため発送作業のチェック体制を確立いたしました。
本来は単純ミスを発見した時点で、当社から事情をお知らせせねばならないところを、何かと取り紛れました失礼のほどお許しくださいますようお願い申し上げます。
まずはとり急ぎお詫びかたがたお願い申し上げます。
敬具
解説
取引先からの抗議に対するお詫びの文書です。ミスが重なっていますので平謝りするしかありません。
例文−26 納期遅延の謝罪
納期遅延のお詫び
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、去るxx月xx日付で、ご注文いただきました「xxxx」の納品につきお問い合わせをいただき恐縮に存じます。xx月xx日までに納入のお約束でございましたが、今回の納入日遅延は全く当社の責任で、お詫びの申しあげようもございません。
仕上げ工程での突然の機械故障のため、貴社へご迷惑をおかけする事態になりましたが、現在では機械も復旧し、連日残業を重ねてのフル生産体制で増産しておりますのでxx日までには必ず納入させていただく所存でございます。
何とぞ以上の事情ご賢察のうえ、ご許容くださいますようお願い申し上げます。
まずは、お詫びかたがたご報告申し上げます。
敬具
解説
納期遅延の可能性が生じたときは電話で連絡してからお詫びのビジネスレターを送ります。深刻に反省していることを相手に伝えるだけでなく、取引先が対応策を検討できるよう確実な納入日を明確にします。
例文−27 不良品交換の依頼
不良品交換のお願い
前略
さて、去るxx月xx日付で注文いたしました「xxxx」、本日着荷いたしました。早速、荷ほどきして検品いたしましたところ、当社指定の塗装色でない製品がx個ございました。
当社設立xx周年特別商品として今回の塗装色を企画したことはご承知のことと存じます。塗装色の異なる製品は直ちに運賃着払いにて返送いたしましたので、早急に指定の塗装色の製品をご発送いただけますようお願い申し上げます。
まずは、とり急ぎご報告かたがたお願いまで。
草々
解説
不良品である理由を正確に伝え、迅速な事後処理を求めます。急いでいること、また被害を受けた抗議の意味で「前略」―>「草々」とし、挨拶などを省略します。
例文−28 不良品混入の謝罪
不良品混入のお詫び
拝復 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、去るxx月xx日付で納品させていただいた商品の一部に不良品が混入し、ご迷惑をおかけする事態になり深くお詫び申し上げます。
貴社の信用を損なう結果にもつながりかねず、誠に申し訳なくお詫びの言葉もございません。つきましては、担当者を大至急参上させ商品を交換のうえ、アフターケアには万全の体制で対処させていただきます。
なお、二度とこのようなご迷惑をおかけしないよう、今回の不良品混入の原因を徹底究明して納品体制見直しをいたす所存でございますが、他にもお気づきの点はご教示くださいますようお願い申し上げます。
まずは、重ねてお詫び申し上げます。
敬具
解説
取引先からの抗議文に対する返事なので「拝啓」ではなく「拝復」となります。「アフターケアには万全の体制で対処させていただきます」として相手からの損害請求に応じる姿勢を伝えています。「重ねてお詫び」するような事態を引き起こしたのですから、ただ謝るだけでなく再発防止策の説明が不可欠です。「これまで以上に注意します」という精神主義では説得力に欠けます。
例文−29 送金の通知
ご送金のおしらせ
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、xx月xx日付−ご請求のxx代金につきましては本日xx銀行xx支店より、ご指定のxx銀行xx支店貴社口座へお振り込みいたしましたので、お知らせ申し上げます。
なお、お手数ながら折り返し領収書をご送付いただきますようお願い申し上げます。
まずは、ご送金のお知らせまで。
敬具
解説
振込みは振込用紙という証拠書類が残るため、振込用紙を領収書として処理している会社も多いようです。返信用の封筒がなければ領収書を送付しない会社もあります。
例文−30 送金の照会
ご送金照会のお願い
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、xx月xx日付貴注第xxxx号でご注文いただきました商品の代金でございますが、お支払い期限のxx月末日をxx日過ぎたxx日現在、ご送金をいただいておりません。
ご多用中お手数をおかけいたしますが、至急お調べのうえxx月xx日までにご送金くださいますようお願い申し上げます。
なお、本状と行違いで既にご送金の節は、悪しからずご容赦くださいますよう願います。
まずはとり急ぎお願いまで。
敬具
解説
実態は督促の文章ですが相手を責める態度は禁物です。あくまでも予期しない送金事故などの発生を気遣った文章とします。
例文−31 支払条件変更の依頼
支払条件の変更について
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、貴社とのお取引条件でございますが、xx月分から下記の支払条件に変更させていただきたいと存じます。
従来よりも厳しい条件でございますが、最近の構造不況や資金繰り等の事情をご賢察いただき、誠に恐縮でございますが何とぞ条件変更をご了承くださいますようお願い申し上げます。
まずは書中をもってお願い申し上げます。
敬具
記
1.現金支払 買掛金合計xx%からxx%に変更
2.支払手形 買掛金合計xx%からxx%に変更し、xx日サイトをxx日に延長
以上
解説
自社の都合による一方的なお願いで、相手は不利益を蒙りますので、窮状を訴えて受け入れてくれるよう要請しています。
例文−32 売掛金残高確認の依頼
売掛金残高確認のお願い
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、貴社に対する当社の売掛金残高は下記のとおりです。ご多忙中お手数ながら貴社残高とご照合のうえ、同封の売掛金残高確認書をお送りくださいますようお願い申し上げます。
もし、ご不審の点がございましたらxx課のxx xx(電話 xx−xxxx−xxxx)まで、お問い合わせください。
なお、誠に勝手なお願いで恐縮ですがx月は当社決算月につき、残高確認書はx月末日までに到着するようお願い申し上げます。
敬具
記
xxxx年xx月xx日現在当社残高 ¥xxx, xxx
以上
解説
こちらの都合でのお願いでありながら期限を切っての回答をお願いしなければなりません。
例文−33 販売キャンペーンご協力の依頼
販売キャンペーンにご協力のお願い
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、当社では来るxx月xx日からxxxx発売5周年感謝キャンペーンを実施いたします。キャンペーン期間中の広告宣伝、記念品、催し物などの詳細と各販売店様の売上目標額を別紙のように計画させていただきましたので何卒ご協力賜わりますよう、お願い申し上げます。
貴社は日頃からxxxxの販売には確たる実績をお持ちですので、これを機会により一層の販売促進にご尽力くださいますよう、お願い申し上げます。
なお、xx月xx日からxx月xx日までの間を特別サービス期間とし、売上に応じて別紙でご案内させていただきました特別割引をいたします。
まずはxxxx発売5周年感謝キャンペーンの売上目標達成ご協力の依頼まで。
敬具
解説
販売キャンペーンは販売活動がマンネリに陥らないためのイベントです。販売キャンペーンを利用して売上目標額を割り当てています。
例文−34 新製品発表展示会の案内
新製品発表会のご案内
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、当社製品xxxxは、その発売以来x年間という長きにわたって大変なご好評をいただいております。当社ではその後継機として新xxxxの開発を進め、この程ようやく製品化に成功いたしました。新xxxxは最新技術を採用したばかりではなく、現行機種以上に「もっと環境にやさしく」というコンセプトが貫かれた製品でございます。
つきましては、一般発表に先立ち販売店の皆様への新製品発表展示会を開催いたします。ご多忙中、誠に恐縮ではございますが何とぞご来場くださいますようお願い申し上げます。
敬具
記
1.日時 xxxx年xx月xx日(x曜日)
午前xx時〜午後xx時
2.場所 xxxxホテル x階 xxの間
xx市xx区xxx−xx−xx
3.電話 xx−xxxx−xxxx
以上
解説
新製品発表展示会を盛会とするには新製品の魅力を訴える必要があります。
例文−35 特約店セミナーの案内
特約店セミナーのご案内
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、昨今の構造不況のため、短期間での景気の回復は望むべくもない状況ですが、当社では社会的な関心が高く、かつ当業界に関係の深いテ―マの研究をxx大学xx学部xx研究室との共同研究として進めてまいりました。
この程その研究成果がまとまりましたので、「xxxxにたいする当社の見解と取り組みについて」として発表し、広く世に問うことといたしました。
つきましては、下記の要領で特約店の皆様へのセミナーを開催し、当社の製品設計コンセプトに流れていますxxxxにたいする当社の考え方をご説明いたしたく存じます。
万障お繰り合わせのうえ、ふるってご参加くださいますようご案内申し上げます。
敬具
記
1.日 時 xxxx年xx月xx日(x) 午後x時からx時まで
2.会 場 xx市xx区xxx−xx−xx xxビルx階xx室
3.テ―マ xxxxxxについて
4.講 師 xx大学xx学部 xx xx教授
※事務局 電話 xx−xxxx−xxxx(担当x xx)
以上
解説
このセミナーでは製品ではなく自社のスタンスをテーマにしています。自社イメージの向上により特約店に自社との取引にプライドを持ってもらうことが狙いです。日本での関心が高いキーワードは、iモード、遺伝子、情報技術、省エネルギー、省資源、環境ホルモン、高齢化社会などです。日本人はIMF時代と聞いてもきょとんとするだけです。
例文−36 工業所有権侵害の抗議
工業所有権の侵害について
前略
早速ですが、このたび貴社が店頭で使用中の「xxxx」のロゴは、当社のロゴ(登録第xxxxxx号)と酷似しております。
目下詳細に検討中ですが、三重円の内部にソーセージを配置している点、緑と茶色を基調とした配色などに類似点があり明らかに工業所有権の侵害に該当します。当社チェーン店の店頭でお客様からの紛らわしいとのクレームも頻発しております。
貴社は直ちに当該ロゴの使用を中止され、誠意あるご回答をお願いいたします。
本状到着後xx日以内にご回答のない場合はしかるべき法的措置をとり対処いたす所存ですのでその旨ご了承おきのうえ善処いただきますようお願い申し上げます。
草々
解説
件名に「侵害」が入っていることからも判りますがきわめて強硬な文章です。デザインが似ているかどうかは主観的な問題です。相手のデザインが似ていて自社の権利を侵害していると断定して、必要であれば法的手段に訴えることを明確にしながら抗議することになります。
例文−37 組織変更の通知
組織変更のお知らせ
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、このたび当社では組織のスリム化による身軽で機敏な企業実現を目指して添付別紙のように本社組織を大幅に統廃合いたすことになりました。当面、担当窓口の変更等により何かとご不便ご迷惑をお掛けすることと存じますがご了承賜わりますようお願い申し上げます。
甚だ勝手なお願いで恐縮ではございますが、社員一同これを機に、これまで以上の敏速なサービスにより皆様にご満足いただけますよう奮励いたす所存でございます。
何とぞ、従前にも増してのご支援を賜わりますようお願い申し上げます。
まずは、略儀ながら書中をもってご通知かたがたご挨拶申し上げます。
敬具
解説
組織変更は取引先になにかと迷惑をかける可能性があります。取引先にとっての組織変更のメリットを説明する必要があります。
例文−38 年賀状
謹んで、新年のお慶びを申し上げます
旧年中は格別のお引立てを賜わり厚くお礼申し上げます。
本年も、なお一層の努力をしてまいりたいと存じておりますので、何とぞ倍旧のご愛顧を賜わりますようお願い申し上げます。
なお、新年はx月x日から平常どおり営業させていただきます。
1995年 元旦
〒xxx−xxxx
xx市xx区xxx−xx−xx xxビルx階
xxxx株式会社
代表取締役社長 xx xx
解説
同じ取引先に必要以上の年賀状が届くことがないように名寄せをする必要があります。お中元やお歳暮ほどは経費がかかりませんのであまり神経質になる必要はないのかもしれません。
例文−39 本社移転の挨拶
本社移転のご挨拶
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、このたび当社では業務拡張のため本社ビルを新築し、xx月xx日から下記へ移転する運びとなりました。これを機に社員一同、皆様にご満足いただけますよう一所懸命に努力する所存でございますので何とぞ倍旧のご愛顧を賜わりますようお願い申し上げます。
なお、電話番号も下記のとおり変更いたしますので併せてご連絡申し上げます。
まずは、ご挨拶かたがたご案内まで。
敬具
記
1.移転先 xx県xx市xx区xxx−xx−xx xxビル
2.電話番号 xx−xxxx−xxxx
3.交 通 xx線xx駅下車 xx街道xx方向へ徒歩x分
以上
解説
新築の本社ビルで気分を新たにしてがんばる気持ちを伝えます、駅から距離がある場合などは案内図を付けたほうが親切でしょう。
例文−40 営業所開設の挨拶
営業所開設のご挨拶
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、当社では、新たにxx市に営業所を開設しxx月xx日から営業を開始する運びとなりました。当営業所では製品展示コーナーを併設し、当社製品の新しい利用方法を提案させていただく所存でございます。
なお、営業所長として本社xx部のxx xxを就任させましたので、倍旧のご支援ご鞭撻を賜わりますようお願い申し上げます。
まずは、略儀ながら書中をもってご挨拶申し上げます。
敬具
記
1.名 称 xxxx株式会社xx営業所
2.営業所長 xx xx
3.所在地 xx市xx区xxx−xx−xx xxビルx階
4.電話番号 xx−xxxx−xxxx
以上
解説
はがきにして壁などにピンで留められるつもりで作成された挨拶状を見ることがあります。この場合は移転先や電話番号などの活字を少し大きめにすると見やすくなります。
例文−41 代表取締役就任の挨拶
代表取締役就任のご挨拶
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、私こと、この度 x xxの後を受けxx月xx日付をもちまして代表取締役社長に就任することになりました。浅学微才の身ではございますが、当社に課せられました役割を全うすべく努力いたす所存でございますので、今後とも格段のご支援、ご鞭撻を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
つきましては、就任のご挨拶かたがた、ご高説を拝聴しご指導を賜わりたく下記のとおり心ばかりの粗宴を差し上げたく存じます。
ご多忙中、誠に恐縮でございますが、ぜひともご来臨の栄を賜わりますよう謹んでお願い申し上げます。
敬具
記
1.日 時 xxxx年xx月xx日(x) 午後xx時〜xx時
2.場 所 xx市xx区xxx−xx−xx xxホテル xxの間
3.電 話 xx−xxxx−xxxx
なお、お手数ながらご出席の可否をxx月xx日までに同封のはがきにてお知らせくださいますようお願い申し上げます。
以上
解説
ホテルが用意している案内図を同封する場合が多いようです。
まだまだビジネスレターとして取り上げるべき例文が多いのですが、今回はこれまでとします。いろいろと解説しましたが、実体の伴わないビジネスレターはいくら美辞麗句で飾り立てても空虚なものです。ビジネスレターが申し分なくても、約束は守らない、製品は不良品だらけということではビジネスの相手としては信用してもらえないことを最後に強調しておきます。
できるだけ明確でやさしい表現を心がけましたがいかがでしたか?日本語の持つさまざまな言い回しが執筆中に頭に浮かんできたときには、古いからといって没にはせずにできるだけそのまま使ってきました。やや古い日本語になった嫌いはありますが日本語学習の参考になれば幸いです。