送信日時: 2001年2月21日水曜日 11:20

第4章 存在と「ある」の表現


<学習のポイント>
1、 存在を表す「ある」と「いる」

(1) 「ある」と「いる」
 存在表現を代表する動詞は「ある」と「いる」でしょう。物・植物は「ある」、人や動物は「いる」と使い分ければほぼ大丈夫なのですが、人でも死体の場合は「部屋に死体がある」と「ある」になりますし、魚屋に並べてある魚は「この店はいつも新鮮な魚がある」と「ある」になります。逆に、「あっ、あそこにタクシーがいた」のように、物に「いる」が使われることも稀にあります。
 つまり、動的に感じる対象は「いる」、静的に感じる対象は「ある」が、使い分けの基準です。

(2) 存在する人・物を表す「〜に〜が(ある/いる)」
 疑問詞が来る位置によって、その文の焦点がどこにあるかがわかります。下例のように、「〜に〜が(ある/いる)」文は「誰が」や「何が」に焦点があり、存在する人や物を表す文です。
   教室にだれがいますか。 → 教室に李さんがいます。
   教室に何がありますか。 → 教室に机や椅子などがあります。

(3) 存在地を表す「〜が〜に(ある/いる)」
 「〜が〜に(ある/いる)」文の焦点は「どこ」(場所)にあります。つまり、「〜が〜に(ある/いる)」文は存在地を表す文です。
   李さんはどこにいますか。 → 李さんは教室にいます。
   黒板はどこにありますか。 → 黒板は教室にあります。
 この存在地を表す文では、位置を表す語といっしょによく使われます。
   消しゴムは引き出しの 中に あります。
   李君はパソコンの 前に います。
           上(うえ)
           下(した)
           中(なか)
           外(そと)

   <名詞>の  前(まえ)
           後(うし)ろ
           右(みぎ)
           左(ひだり)
           隣(となり)
           近(ちか)く
           間(あいだ)

(4) 「〜には〜がある」文
 「AにはBがある」文は、Aが含む中身・内容・部分などの属性Bを表す表現です。
  この国でとれる果物には、バナナやパイナップルなどがある。<物の種類>
  彼には学識(教養・地位・誇り・経験・夢…)がある。   <人の属性>
  規則には例外がある。そして、例外には理由がある。    <ことの属性>
 「ある」は「在る・有る」と漢字を使えば二通りになりますが、この「ある」は「在(あ)る」ではなく、所有・属性・経験・考え・地位など、広く「持つ・備える」などの意味を表す「有る」の用法です。

2、 「ある」の意味の広がり

(1) 存在の「いる」の意味で使われる「ある」
  昔々、ある所におじいさんとおばあさんがありました。
  多くの賛成者がある。
 もともとは、物・人・動物も含めてその存在を表したのが「ある」で、その用法が昔話などでは今も残っています。現代語では「いる」を使うのが普通です。

(2) 財産や家族・友人を所有しているという意味で使われる「ある」
  彼にはお金がある。
  お隣にはいい車がある。
        ◆
  大阪に親戚がある(→いる)。
  彼女には子供がある(→いる)。
 「(人)がある」は今も使われていますが、所有意識が強く出るので、妻・子・兄弟や親戚ぐらいまでにした方がいいでしょう。例えば「恋人がある」は現在では心理的に抵抗がありますから、「いる」を使った方がいいでしょう。

(3) 特別の地位や環境にいることを表す「ある」
  理事長の職にある。
  病の床にある。
  彼は今、逆境にある。

(4)「持つ/備える」の意味で広く使われる「ある」
  彼には才能がある。
  彼は政界に影響力がある。
  重さが2トンもある。
        ◆
  私にいい考えがある。
  君の意見に疑問がある。
  ちょっと用事がある。

(5)「起こる」(発生)、「行われる/開かれる」(開催)を表す「〜で〜がある」
  踏切で事故があった。    <発生>
  台湾で大きな地震があった。 <発生>
  この会場で試験がある。   <開催>
  北京で国際会議がある。   <開催>
 一番注意しなければならないのは、この「〜で〜がある」文です。これは「〜で〜が起こった」「〜で〜が行われる」の意味で使われていますから、動作の行われる場所を「で」で表します。

例題1 トイレはどこ?

李:あのう、すみません。トイレ(ア)(A)ありますか。
駅員:トイレ(イ)売店の側(ウ)あります。
李:えっ?売店(エ)(B)ですか。
駅員:ほら、あそこです。

1. (ア)〜(エ)に助詞(かな一字)を入れてください。

2. (A)(B)の中に入る適当なものはどれですか。
 a どれ
 b どの
 c どこ
 d どこに
 e どこで

解答
 1、ア=は  イ=は  ウ=に  エ=は
 2、A=d  B=c

例題2 郵便局はどこ?

李:あのう、すみません。
林:(甲、はい/ええ)、何でしょうか。
李:近く(ア)郵便局(イ)ありますか。
林:(乙、ええ/いいえ)、あります。ほら、あそこ(ウ)デパート(エ)ありますね。郵便局(オ)、あのデパート(カ)隣です。

1. (ア)〜(カ)に助詞(かな一字)を入れてください。

2. 甲、乙は正しい方を選んでください。

解答
 1、ア=に  イ=が  ウ=に  エ=が  オ=は  カ=の
 2、甲=はい  乙=ええ

* 「近く」と「遠く」

 「近く」には、まず、「近い場所」を表す名詞用法があります。
   駅の近くに郵便局がある。
   駅の近くで交通事故があった。
 数詞の下に付いて、ほぼその程度・分量という意味を表します。
   距離が100キロ近くあります。
   体重が100キロ近くある。
 また、「近く」は「近い」の連用形なので副詞用法があって、「ちかいうちに/もうすぐ」などの意味も表します。
   工事は近く再開する予定だ。
   近くこの会場で国際会議が開かれる。
 「遠く」も「遠く離れた場所」のような副詞用法以外に、「遠い場所」を表す名詞用法があります。
   あまり遠くに行かないでください。
   遠くの山々が見える。

例題3 デパートで売り場を尋ねる

李:あのう、紳士服売場(ア)どこにありますか。
店員:紳士服売場(イ)五階で(A)。
李:靴下や下着も(甲、そこ/あそこ)(ウ)ありますか。
店員:はい、五階に(A)。(乙、そちら/あちら)(エ)エスカレーターが(A)から、どうぞご利用ください。

1. (ア)〜(エ)に助詞(かな一字)を入れてください。

2. (甲、乙は正しい方を選んでください。

3. (A)には同じ語が入りますが、どれですか。
 a います
 b あります
 c です
 d ございます
 e いらっしゃいます

4. 存在の「ある」の意味で使われている「ございます」はどれですか。
 a おめでとうございます。
 b お手洗いはこちらでございます。
 c 婦人服売場は三階にございます。
 d とてもおいしゅうございます。
 e 社長は今お部屋でお休みでございます。

解答
 1、ア=は  イ=は  ウ=に  エ=に
 2、甲=そこ  乙=あちら
 3、A=d
 4、c

* 「ございます」の世界

 「ございます」は「ある」の意味の丁寧語ですが、「でございます」の形は「です」の丁重な言い方になります。主に秘書やお客相手の職業の人が使うビジネス用語です。
  紳士服売り場は
   二階にあります
   二階にございます。
  紳士服売り場は
   二階です。
   二階でございます。
 これ以外にも「おはようございます」「おめでとうございます」のような挨拶語を作ったり、「おいしいです→おいしゅうございます/うれしいです→うれしゅうございます」のように形容詞について丁重語を作ったりします。

* よく使う丁寧表現

 「お」や「ご」、「そうです→さようでございます」などを丁寧語といいます。丁寧語は敬語と違って相手への敬意を表すものではありませんが、言葉全体の印象を柔らかくし、会話全体をソフトにしますから、ビジネス会話ではとても大切になります。
 なお、主な丁寧表現には次のようなものがあります。
   あります     ございます
   ありません    ございません
   さようなら    失礼します
   すみません    申しわけございません
   すみませんが   恐れ入りますが
   です       でございます
   ですか      でございましょうか
   そうです     さようでございます
   いいです     けっこうです
   いいですか    よろしいでしょうか
   どうですか    いかがでございますか
   できません    いたしかねます

例題4 場所や位置を答える


1. 絵を見て答えてください。ア〜オの( )の中に入る適当なものは1)〜5)のどれですか。
 ア 孫さんは市役所の(   )にいます。
 イ 図書館は公園の(   )にあります。
 ウ 郵便局は銀行と警察署の(  )にあります。
 エ Aさんの家は公園の(  )にあります
 オ デパートの(  )に喫茶店があります。

 a 近く
 b 側
 c 中
 d 間
 e 隣

2. 李君が孫さんに待ち合わせ場所を説明しています。A〜Dの中に適当な位置を表す語を入れてください。
 駅の(A )の道をまっすぐ行くと、T字路があります。すると、(B)に公園、(C)に大きいデパートがありますが、私はそのデパートの(D)にいます。

解答
 1、ア=a  イ=c  ウ=d  エ=b  オ=e
 2、A=前  B=左(側)  C=右(側)  D=前

* 「側」と「隣」

 存在表現は、上下、左右、中外、前後ろなどの位置を表す語とよくいっしょに使われますが、その中では「側」と「隣」の区別が難しいかもしれません。
 「側」は前後左右に関係なく、接近した位置を表します。「側」よりも距離感がある場合は、「近く」が使われます。ですから、この絵で言えば、「市役所は駅の<△側に/○近く>にあります」のどちらも使えますが、「銀行は駅の<?側に/○近く>にあります」のように、「側」は使いにくいですね。1)も孫さんは道路の反対側にいるので、「近く」の方が自然でしょう。
 「隣」は左右に接し合っている位置か、左右にある一番近距離にある位置を指しますが、同類の物が並んでいる場合に使う語で、「私の家は海の<○側に/×隣>ある」とは言えませんし、「デパートの<○側に/×隣>に李さんがいる」のようには使えません。d)は同種の物(建物)で、接し合っていますから「隣」の方が自然です。

例題5 人を捜す

李:孫さんは教室(ア)(甲、います/いました)か。
林:ええ、教室(イ)(A)よ。
李:加藤先生も教室(ウ)(乙、いましたか/いらしゃいました)か。
林:ええ、加藤先生(エ)ごいっしょでした。

1. (ア)〜(エ)に助詞(かな一字)を入れてください。

2. 甲、乙は正しい方を選んでください。

3. (A)の中に入る適当なものはどれですか。
 a 勉強です
 b 勉強します
 c 勉強しました
 d 勉強しています
 e 勉強していました

4. 下線部の「いっしょ」の用法として、間違っているのはどれですか。
 a 二人は故郷がいっしょだ。
 b 入社したのは、彼といっしょだ。
 c 駅までごいっしょしましょう。
 d 全部いっしょに包んでください。
 e 味も香りもいっしょにすばらしいですね。

解答
 1、ア=に  イ=で  ウ=に  エ=も
 2、甲=いました  乙=いらっしゃいました
 3、A=e
 4、d

* 「〜した」と「〜していた」

 動作性の動詞に「〜ている」がつくと、眼前で進行中の動作か、習慣を表します。(→第18章の「〜ている」)「していた」は話題となっている過去のある地点で進行中の動作を表し、「〜した」は既に完了した動作を表します。
 図解すると以下の通りです。

* 「いっしょ」と「どちらも/どれも」

 「いっしょに」は4のaのように同じ場所を表したり、bのように同じ時間を表したり、cのように行動を共にすることを表したり、dのように一つにまとめることを表したりします。どの場合も「A、B(C…)が一体化」することを表します。
 その用法を見ると、「いっしょ」は動作性の語で、「いっしょの電車(に乗る)」のように名詞に結びつくか、「いっしょだ」と断定の助動詞「だ」が来るか、「いっしょに〜する」の形で動詞に結びつくかで、eのような形容詞や状態性の語に結びつく用法はありません。eのような場合は、「味も香りも、どちらもすばらしい」のように「どちらも」を使えばよかったのです。三つ以上であれば「味も香りも盛りつけも、どれもすばらしい」のように「どれも」を使います。

例題6 待ち合わせ

李:今夜(甲、に/×)、○○のコンサートがあるんだけど、いっしょに行かないか。
林:いいけど、そのコンサートはどこ(ア)あるの?
李:××会館(イ)7時(乙、に/から)だけど。
林:その××会館はどこ(ウ)あるの?
李:中野駅の北口からすぐのところだよ。
林:わかった。じゃ、何時(丙、に/×)どこ(エ)待ち合わせる?

1. (ア)〜(エ)に助詞(かな一字)を入れてください。

2. 甲〜丙は正しい方を選んでください。

3. 以下のa〜eの例文を読んで、A〜Cの質問に答えてください。
 a JRで人身事故があった。
 b 私には妻がある。
 c 試験まで、もう一週間ある。
 d 今日、忘年会がある。
 e 辞書は本棚にある。

 A a〜eの中で、会話中の下線部の「ある」と同じ意味のものはどれですか。
 B a〜eの中で、広い意味の所有を表している「ある」はどれですか。
 C a〜eの中で、「起こる」の意味で使われている「ある」はどれですか。

解答
 1、ア=で  イ=で  ウ=に  エ=で
 2、甲=×  乙=から  丙=に
 3、A=d  B=b   C=a

例題7 火事

李:昨夜、すぐ近所(ア)火事(イ)あったんだ。
林:へえ、それは(大変だ/大変だった)ねえ。
李:うん、消防車がすぐ駆けつけて、火は消したんだけど、僕の家(ウ)も類焼の恐れ(エ)あったので、一時は(避難した/避難してた)んだ。
林:でも、大事にならなくて(いい/よかった)ね。

1. (ア)〜(エ)に助詞(かな一字)を入れてください。

2. (/)は正しい方を選んでください。

3. 下の例文a〜eを読んで、A〜Cの質問に答えてください。
 a すぐ来てください。
 b すぐ春になってほしいなぁ。
 c このパソコンは誰にでもすぐ使えます。
 d 私の家は駅のすぐ側です。
 e 彼はすぐ怒る。

 A 下線部の「すぐ近所」と同じ「すぐ」はどれですか。
 B 下線部の「すぐ駆けつけて」と同じ「すぐ」はどれですか。
 C a〜eの中で、「すぐ」の使い方が間違っているのはどれですか。

解答
 1、ア=で  イ=が  ウ=に/へ  エ=が
 2、=大変だった  =非難してた  =よかった
 3、A=d  b=a  C=b(→早く)

* 「すぐ」の使い方

 「すぐ」は本来の時間的に「間を置かないで」のaという意味から、{容易に/簡単に」のcや、「傾向や習性がある」のeという意味が派生します。更に、時間がかからないことから、「至近距離の場所」のdが生まれます。
 時間の「すぐ」は「すぐ来て」「すぐ行く」「すぐ起きなさい」のように意志動詞といっしょに使います。
 「容易に〜する」意味で使われときは「すぐできる」「すぐわかる」「すぐ壊れる」のように可能形や自動詞が多く現れます。
 傾向・習性の時は「〜と、〜すぐ〜」の形で使われることが多く、「酒を飲むと、すぐ眠くなる」「薄着をすると、すぐ風邪を引く」のように状態性・無意志性の動詞といっしょに使われます。
 場所の「すぐ」は「すぐ<側・近く・隣・前・後ろ…>/すぐのところ」のように位置を表す語といっしょに覚えた方がいいでしょう。

* 「すぐ」と「はやく」

 「はやく」は「約束の時間より、はや[早]く行く」のように、話題の時より前を表す<先後関係>の「早い」と、「もっとはや[速]く歩きなさい」のように、速度を問題にする「速い」に分かれます。そして、後者は「急いで」や「迅速に」につながってきます。
 「はやく」は、「<はや(早)く・すぐ>寝なさい」のように時間の「すぐ」と同じ文脈で使えることが多くあります。この場合の「はやく」は短時間を表すので、「はやく寝なさいよ」「うん、もう一時間勉強してから寝る」のように、時間に幅があります。「すぐ」は即時ですから、時間に幅がありません。ですから、2)のようの春が来る」までの時間を問題にしている場合、「すぐ」は不自然です。

例題8 海の幸山の幸

李:この地(ア)とれる特産物(イ)はどんな物(ウ)ありますか。
林:果物(エ)は桃(甲、とか/や)みかん(乙、とか/や)(オ)あります。(A)、近く(カ)海もあるので、新鮮な魚もたくさんとれます。
李:いいところですねえ。
林:ええ、海の幸山の幸(ク)恵まれていますし、温泉もありますから、保養地(として/にとって)も有名です。

1. (ア)〜(ク)に助詞(かな一字)を入れてください。

2. 甲、乙は正しい方を選んでください。

3. (A)にはどの接続詞が一番適切ですか。
 a そして
 b それに
 c それで
 d それから
 e また

4. 下線部の「たくさん」の用法が間違っているものはどれですか。
 a たくさん召し上がってください。
 b たくさんおもしろい映画でした。
 c 友だちがたくさんいます。
 d 「もう一杯いかが?」「いえ、もうたくさんです。」
 e 人がたくさん集まっているね。

解答
 1、ア=で  イ=に  ウ=が  エ=で  オ=が  カ=に  キ=が  ク=に
 2、甲=とか〜とか(「〜や〜など」なら使える)  乙=として
 3、A=b
 4、b

* 「そして」と「それに」

 「そして」は並立、「それに」は累加・添加で、「〜に加えて」という意味になります。図示すると、以下のようになるでしょう。

 接続詞「また」は「そして」から「それに」までの幅を持った語で、多くは「そして同時に〜」という意味を表します。ですから文法的には使えることになりますが、書き言葉ですから、この種の会話では使われません。
  金も要らない。また名誉も要らない。(=そして)
  彼はハンサムだし、また頭もいい。(=それに)

* 「たくさん」と「とても」

 「たくさん」は「一つ、二つ、三つ…たくさん」のように数量が多いことを表しています。また、人数を問題にした場合は「おおぜい」と同じ意味になります。ですから、bのように数量で測れない場合に使うことはできません。この場合は「とても」が自然です。
 なお、「たくさん」はdのように、数量が限度を超えた場合は「十分だ」(=これ以上は要らない)という意味にもなります。

例題9 相談する

李:君(ア)相談(イ)あるんだけど。
林:いいよ。何?
李:今度の文化祭のことだけど、(A)○○君が協力してくれなくて、困って(甲、いる/ある)んだ。(B)いだろうか。
林:僕(ウ)いい考え(エ)ある。任せて(乙、いて/おいて)くれ。

1. (ア)〜(エ)に助詞(かな一字)を入れてください。

2. 甲、乙は正しい方を選んでください。

3. A、Bの中に入る適当なものはどれですか。
 a どうして
 b どうしたら
 c どうしても
 d どうか
 e どうも

4. 「いい」の意味が他と違うのはどれですか。
 a 彼女はスタイルがいい。
 b 「もういいですか」「いいえ、まだだめです」
 c あの人はいい人だ。
 d ああ、いい気持ちだなぁ。
 e あの二人は仲がいい。

解答
 1、ア=に  イ=が  ウ=に  エ=が
 2、甲=いる   乙=おいて
 3、A=c  B=b
 4、b

* 「どうしたら」と「どうしても」

 「どうしたら」は「どうしたら、はやく日本語が上達しますか」のように手段・方法を相手に尋ねる疑問詞です。「どうしても」は「どんな手段・方法を使っても/どんなに努力をしても」を表す副詞で、代表的な用法は以下の四つです。
 <〜ない:不可能>
  どうしてもわからない。
 <〜てしまう:不本意な結果>
  どうしてもミスをしてしまう。
 <〜なければならない:義務>
  どうしても行かなければならない。
 <〜たい」希望>
  どうしても大学に行きたい。

* 「いい(=よい)」の使い方

 「いい」は「よい」の話し言葉ですが、「よい」の丁寧な言い方は「よろしい」になります。意味的には「正しい/満足できる/適切だ」など多岐にわたりますが、簡単に言えば、望ましい状態は全て「よい」が使えます。この「よい」の反対語は「悪い」になります。
 注意してほしいのは、「いい」は許可・許容の意味もあり、この場合の反対語は「いけない」になります。つまり、a〜eの中でbだけが「いい→いけない」と対応しますが、それ以外は「いい→悪い」と対応します。

例題10 早退の許可を求める

李:今日は用事(ア)あるので、ちょっと早く(甲、帰って/帰らせて)いただけませんか。
先生:用事って、どんな用事?
李:国へ帰る友人の送別会(イ)あるんですが、僕が幹事に(乙、して/なって)いるんです。
先生:その送別会は何時からどこ(ウ)あるの?
李:6時から私の家(エ)あります。
先生:わかった。今日だけ特別に許可しよう。

1. (ア)〜(エ)の中に入る適当な助詞はどれですか。

2. 甲、乙は正しい方を選んでください。

3. 以下の「ちょっと」の用法の中で、「少し」が使えるのはどれですか。
 a 彼はちょっと前に帰ったよ。
 b 「あのう、ちょっと田中さん」「はい、何ですか」
 c 難しくて、僕にはちょっとできません。
 d ちょっとした風邪ですから、心配は要りません。
 e ちょっとお茶でもいかがですか。

4. 「特別(に)」の用法が間違っているのはどれですか。
 a 君だけを特別に扱うことはできない。
 b 特別変わったこともないよ。
 c 彼は成績が優秀だが、特別に英語が得意だ。
 d 今日の君は特別に美しいね。
 e これは先生が私のために、特別に買ってきてくれたものです。

解答
 1、ア=が  イ=が  ウ=で  エ=で
 2、甲=帰らせて   乙=なって
 3、a
 4、c

* 「ちょっと」と「少し」

 「ちょっと」が数量や程度の低さを表すときは、「少し」と意味面では変わりません。「ちょっと」がフレンドリー会話専用の話し言葉で、書き言葉や丁寧な会話では「少し」、もっと丁寧な会話では「少々」が使われるという違いがあるだけです。
  ちょっと 待ってよ。
  少し 待ってください。
  少々 お待ちください。
 しかし、用法から見ると「ちょっと」は「少し/少々」よりも広い使い方があります。例えば、3のbのように相手を呼び止めるときに使う「ちょっと」や、cのように「ちょっと〜ない」の形で「簡単には〜できない」の意味を表したり、d、eのように「軽い・軽く」などの感情を表す「ちょっと」があって、これらは「少し/少々」が使えません。
 ですから、このa〜eの中で「少し」が使えるのはひとつだけとなります。

* 「特別に」と「特に」

 二つは類義語ですが、「特別(に)」は「普通と違って例外的に」、「特に」は「他の〜より程度が著しく異なり」という意味で使われます。「特別に≒例外」「特に≒選択」と考えれば、わかりやすいでしょう。
 例えば、4のdの「特別に美しいね」は「いつもはそうではないが、今日は例外的に美しい」の語感、「特に美しいね」は「いつも美しいが、今日はなお一層美しい」という語感が生じることになります。では、「特別に」が不自然なのはどれでしょうか。a〜eの例文を例に取ると、意味上、以下の表のような使い分けが生じます。
 なお、「わざわざ」は別に取り上げます。
     特別  特に  わざわざ
 例文1)  ○   ×   ×
 例文2)  ○   ○   ×
 例文3)  ×   ○   ×
 例文4)  ○   ○   ×
 例文5)  ○   ○   ○



日本語教材の日本語駆け込み寺 参拝口へ戻る


inserted by FC2 system